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ハルシオン®
(トリアゾラム)
2004年 日本社会精神医学会雑誌

 おそらく日本一有名な睡眠導入剤。鳥が寝ている図像が使われているのは、「ハルシオン」が英語でカワセミのことだからである(ただし、薬は”Halcion”で、カワセミは”halcyon”)。
 さて、それではなぜカワセミが睡眠薬の名になったかといえば、それはギリシア神話に由来する。風神アイオロスの娘ハルキュオネとその夫ケユクスはとても仲むつまじく、お互いを「ゼウスとヘラのようね」と言い合ったため、その傲慢さが神々の怒りを買い、ケユクスは航海中に嵐に遭って死んでしまう(私には、ゼウスとヘラが仲むつまじいとはとても思えないのだが)。しかし、嘆き悲しむハルキュオネの姿にヘラが同情し、二人はカワセミに変えられて再会したのである。鳥になったハルキュオネは海の上に浮かぶ巣を作り、冬至の頃に卵を産んだ。そこで父である風神アイオロスは、ハルキュオネが卵を産む間、海に風を吹かせず凪にするようにした。このことから、冬至前後の天候の穏やかな時期のことを”halcyon days”といい、またそこから転じて平穏で幸福な「古き良き日々」のことを”halcyon days”というのだそうだ。
 つまり、穏やかで幸福な眠りを与える薬だからハルシオン、というわけである。